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2005年04月30日

病院組織に必要なマネジメント  病院管理会計(3)-石井友二

整理すると、まず月次決算が診療報酬の請求が終了したのを受けて完了する必要があります。すなわち月次決算は発生主義に基づき、翌月10日程度には終了することが前提となります。

一方で予算編成が行われ、部門別損益計算が行われるなかで、予算実績管理が部門別の実施されることになります。在庫の受け払い等が正しく部門別に把握されていることが必須です。

予算実績差額分析を行うときに、原因を特定する必要があります。原因特定を財務会計で行うことは困難ですから、そのためにKPIを決定しておくことが必要となります。患者数×単価=収益であるとすれば、患者数がこれだけ影響、単価がこれだけ影響ということになります。

そこで、患者数の影響は部門別にチェック、単価は、手術件数や疾病、オーダーや場合によっては薬等のながれをチェック、それを増加させるためのさまざまな具体的な行動に誘導するといったながれになります。

一方でDPCでは、患者別疾病別原価管理が必要ですが、そのためにはレセプトか、パスから行為を抽出し、行為別原価計算を実施する必要があります。

部門別損益計算
においては、一次集計で各部門の利益を算出、間接部門のコストを直接部門であるコメディカル、外来、病棟に配賦、二次集計を行ったのち、補助部門(コメディカル)収益と費用を外来病棟に配賦した三次集計を行います。

そのプロセスにおいて経費だけを集計すれば、外来、病棟別に患者さま一人当たり治療間接費を計算することができます。勿論部門の設定によっては、さらに精緻な数値を計算することができます。

これが行為別原価計算における、直接材料費、直接労務費、直接経費にプラス、治療間接費として行為毎の原価を構成することになります(続く)。

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2005年04月24日

病院組織に必要なマネジメント  病院管理会計(2)-石井友二

なお、予算実績管理ですが、多くの病院で予算管理をしていません。ちなみに予算は利益計画であると誤解されている方が多くいます。そうではなく、予算は5W2Hで、具体的な行動までをも規定したものであることが理解されなければなりません。
すなわち、一般的には、経営方針の提示→部門方針の決定→個人目標の設定といった目標のブレイクダウンと同時に、一方で、経営方針の提示→年度事業計画立案→部門別利益計画立案→部門予算化(部門行動計画化=5W2H)がおこなわれ、実績との間で差額原因分析→対策立案がおこなわれることになります。

なお、差額分析のためには行動結果分析とKPIによる分析が必須です。先行指標と実績指標の分析がなければ概念的な分析で終始してしまうからです。

正しい実績把握のためには、前述のように正しいかつ迅速な月次決算が必要であることを忘れてはなりません。病院で税理士に任せ月次決算をしていない、あるいは予算実績管理をしていない、先行指標を決定していない、といった病院は、現状どうなっているのかといった会計データをもたずに経営をおこなうことになり、危険です。

医事関連数値にしても入金ベースで会計処理をおこなっていれば、例えば査定減が会計的に把握できず、再請求数字に含まれるなかで改革のチャンスを失うことになります。暗闇で羅針盤ももたず、経営をしていくほど苦しいことはありません。

劇的な環境変化のなかで確実に目的地に到達するためには、病院管理会計の導入が間違いなく必要です。(続く)

投稿者 石井友二 : 20:18 | トラックバック

2005年04月22日

病院組織に必要なマネジメント  病院管理会計(1)-石井友二

正確かつ迅速な部門別損益計算を前提として予算実績管理やKPIを利用した指標管理がおこなわれる必要があります。なお、これらはDPC対応における患者別疾病別原価計算における間接費の根拠となる数値を提供します。病院管理会計の構築が必要です。         

発生主義に基づく会計がおこなわれ、在庫受け払い管理が正確に実施され、ロスの把握ができ、会計ソフトや、医事データ分析のための仕組みがあり、最終的に部門別損益計算は階梯式配賦法によって実施します。経営方針が提示され部門方針、目標管理と展開され、個々人の行動指標が明確になることによって、予算実績管理における仔細な差額分析がおこなえることになります。

当社の部門別損益計算システムを利用して部門別損益計算を実施するということは、前提として正しい会計処理がおこなわれることや、また、現場在庫(SPDを利用したとしても現場在庫が現場に残ることになり、これらの管理が正しく行われるかどうかによって、会計の精度が異なる)の医療材料や薬、消耗品の管理が正しくおこなわれていることを示しています。(続く)

投稿者 石井友二 : 19:15 | トラックバック

2005年04月21日

病院組織に必要なマネジメント  医療ツール(10)-石井友二

まだまだ多くの医療ツールが数多くあります。人事制度を整備したとしても、このような医療ツールを用意しなければ成果をあげることができません。明確な内外戦略の立案と具体的な医療ツール整備のためのプランを立案し、活動を開始しなければなりません。
すなわち、人事考課制度、あるいは評価制度は、評価を行う対象があってはじめて評価をおこなうことが可能となります。内外戦略の達成のための活動をおこなうといった方向を提示し、部門や個人の目標として展開、そのなかでの仕組みづくりや運用のなかで成果を求め、結果として考課や評価がおこなわれるという図式です。

なお、成果があがったのかどうかについてモニタリングをする仕組みが必要です。それが病院管理会計です。病院管理会計が整備されていなければ、現状がどうなっているのか、目標に対して結果がどうであったのかが把握されません。病院管理会計が必要です。(続く)

投稿者 石井友二 : 14:33 | トラックバック

2005年04月19日

病院組織に必要なマネジメント  医療ツール(9)-石井友二

事故が訴訟に発展することが多くなってきました。判決が1000件であるとすれば、その数倍は訴訟になる前に示談になっているわけです。裁判所も医療を学び、専門部会をつくり処理時間を短縮化しています。勝訴率も向上させる、原告側に立つ傾向があるという結論です。  

弁護士も法科大学院の卒業生がでるころから増加し、また通常の試験を通過する弁護士数も増加、弁護士の多くが医療過誤訴訟を行うと希望をしている現状では、病院は事故を発生させない状況をつくるために過去の判例を学習し、事故の背景や事実認定から対策の糸口を発見し、具体的な活動に結び付けていく必要があります。

注意義務違反、なかでも看護観察義務違反、説明義務違反が3大理由であるとすれば、それらに対して、注意義務を懈怠しないように仕組みをつくる教育を行う、評価する、といったことが必要であるし、同様に看護観察義務違反を排除するための看護プロセスの見直しを行うなかで、観察、診断、計画、実施、記録のフローの質を向上させることが重要な対策となります。
説明義務違反はコミュニケーションや仕組みだけではなく、医療従事者のメンタリティーやマインドに大きく依存します。

病院はよくしてくれたけれども、あの看護師は許せない、とった個人的な軋轢から訴訟が惹起されることを理解すれば、仕組みやルールをつくる、コンプライアンスを明確にするといったことだけではなく、本来の意味での医療従事者の接遇政策(患者さまの立場にたった医療・看護・医療周辺活動)をおこなうことも必要であると考えます。

医療事故対策のための道具はやはり重要な医療ツールの一つです。(続く)

投稿者 石井友二 : 21:23 | トラックバック

2005年04月18日

「北海道三笠市に世界最先端の動物実験施設オープン。抗体研究のメッカに」

松田一敬(まつだいっけい)
HVC戦略研究所 社長
matsuda@hokkaido-vc.com
www.hokkaido-vc.com


松田いっけいです。
今日はマウスのお話です。高崎に免疫生物研究所(IBL)という会社があります。20年間も地道に抗体を開発し、売ってきた会社です。モノクロナール抗体がとれたといっても、あまり陽の目を浴びてきたわけではありませんでした。でも最近はハーセプチン、リッキサン、アヴァスティン、アービテックス、レミケードなどおなじみの抗がん剤や抗リューマチ剤等の分野で抗体医薬の重要性が高まり、抗体に関する注目度も一気に高まってきました。

2005年に米FDAで承認される新薬の3割程度が抗体医薬ともいわれています。低分子化合物に比べ、副作用が少ないため、臨床開発の成功率が高いのがその理由です。
というわけで、IBLの抗体ビジネスへの注目も一気に高まってきました。抗体を作る場合、マウスを使ってヒト化抗体をつくるのですが、この分野で経験の深いIBLの存在が俄然大きくなってきました。この会社は古くより北海道大学医学部(正式には遺伝子病制御研究所)と共同研究をしてきました。

昨年は製薬企業や北大発バイオベンチャーである㈱ジーンテクノサイエンスと一緒に北大に寄附講座を開設。共同で開発している抗体がリューマチ等自己免疫疾患の薬になる可能性も高まってきました。


そして、なんと、この4月8日、三笠市に動物実験施設である「三笠研究所」がオープンしたのです。1万坪の敷地に600坪の研究所を建設。研究員ら約15人が遺伝子操作した疾患モデルマウス15,000匹の飼育、研究を行い、がんや脳疾患などの薬の開発に生かします。

三笠市は太古の昔は恐竜が栄え、戦前戦後はその遺産である石炭で栄えましたが、次は3匹目のどじょう、ではなくマウスを狙います。北海道は低湿度で冷涼なため、動物実験には適しています。人間にとってもいいところ。目の前には北海道で最大級のジャスコもあり、買い物も便利。裏手には私もよく行くゴルフ場『リンクス』があり、生活環境も中々です。大手監査法人に勤務している知り合いの会計士がこの近辺にログハウスを購入しました。

敷地は3000坪。費用は東京のワンルームマンションより安い。札幌から車で40分くらい。ちなみに私のバイオ投資のパートナーは「岡山みねのぶ」といいますが、この研究所は『岡山』というところに立地しており、最寄の駅は「みねのぶ」といいます。何たる偶然!
などと途中から四方山話になってしまいましたが、抗体医薬がどんどん存在感を増していく中、日本の抗体研究の拠点が北海道の石炭の跡地にできました。本当に面白いと思います。

投稿者 石井友二 : 19:16 | トラックバック

2005年04月17日

病院組織に必要なマネジメント  医療ツール(8)-石井友二

何れにしてもインシデントやアクシデントのデータベース化を図り、対策と成果(対策をおこなったら事故が低減した)といったことが実感できるといったこと、対策が実行されるよう事故が発生したら巡視活動を行う、疾病と事故、患者属性と事故、入院時期と事故といったリレーションを明確にするなかで、対策を標準化し、常に行動するリスクマネジメントを行う必要があります。

忙しいのですが、事故が発生したら、その場で実際に事故を起こした者の目線、視点で事故が発生した行為を最初から実施してみたうえで、問題を把握、対策を立案するといったことが適当です。

事故の抑止、予防のためには事故データベース化が必要です。当社はリスクブロックというソフトを開発していますが、評判であるのも上記について理解が進んでいるからであると考えます。(続く)

投稿者 石井友二 : 19:40 | トラックバック

2005年04月15日

病院組織に必要なマネジメント  医療ツール(7)-石井友二

なんでもかんでも人のせいにするのではなく、仕組みを考えなければなりません。注射箋をドクターが起票、指示受け確認後看護師Aさんが注射薬を用意、看護師Bさんが患者○○さんを確認、看護師Aさんが実施及び実施後の状態観察、看護師Bさんが注射箋にサイン、看護師Aさん記録、のながれがあるとします。

そこで看護師Aさんが指示受け確認から記録までを一人で行えば、事故が起こる可能性を排除する牽制や確認が行われない状況にあるわけで、それを個人の責任にしてよいのかということです。

まずは事故を発生させないための仕組みをつくり、そのうえで当該仕組みやルールが遵守されているのかどうかを管理する、これがリスクマネジメントの基本です。すべてを一人で行い事故が起こり、個人の責任にして原因を追求しない、対策を立てないなかでは事故は低減しません。

あるべきかたちを想起したうえで、原因分析を行う、対策を立案する、対策を実行する、教育する、結果を測定するといったことをリスクマネジメントの基本とすることが必要です。

インシデント及びアクシデントレポートの処理を早期に実施するためには、現場で対策、リスクマネージャーがチェック、委員会で承認、通達、マニュアルへの反映、教育といったフローをつくりあげることが必要です。同時に現場のスタッフが改善マインドをもつための学習、積極的な改善提案制度の導入といったことが付随的に実施され、それらが最終的には個人の評価に結びつくようコントロールする必要があります。(続く)

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2005年04月13日

病院組織に必要なマネジメント  医療ツール(6)-石井友二

データ収集、原因分析、対策立案、実施、評価、教育がリスクマネジメントの基本であるとすれば、インシデント、アクシデント報告書を収集し、原因分析する段階で、すでに壁にぶちあたることが多いようです。

そもそもSHELL分析を批判するつもりはまったくありませんが、多くの看護師さんがSHELLでは限界があるとおっしゃいます。北海道のある病院はSHELLをやめたと看護部長がお話されていました。

しかし、一時的な分析としてはSHELLは機能すると思います。ただし、解決方法を提供するものではなく、現場で仕事の仕組みの問題で、ハードの問題で、環境の問題で、他人の問題で、自分の問題でといった分類で終わっている病院が多いと思います。

それをSHELLの問題とするのではなく、その次のステップとして問題を掘り下げていかないことに課題がありそうです。その場合には医療安全対策委員会やリスク部会といった委員会の運営に問題があるケースがあります。

すなわちレポートが分析されるのが月に2回、その間に多くのレポートがあがってくる。処理が間に合わない、そこでレポート山積み状態となり、もうそこから作業が進まないということになります。原因分析が行われると皆ヒューマンエラーになってしまうことも問題です。

仕組みの問題が人の問題、すなわち集中力が欠落していた、あるいは意識が他に向いていた、何気なく考えなしに実施してしまった、したがってこれは人の問題、ヒューマンエラーということになっているのはおかしいと思います。(続く)

投稿者 石井友二 : 07:08 | トラックバック

2005年04月12日

病院組織に必要なマネジメント  医療ツール(5)-石井友二

リスクマネジメントについてはどうでしょう。今日も病院のリスクマネジメント委員会でミーティングをしてきましたが、アクシデントやインシデント報告書の枚数は増加しても、分析や対策が十分ではないものが大半でした。結局何度も同じ事故が起こり、どの病院でもそうですが、毎年同じ事故が低減せず、グラフがまるで予算実績管理を正しく行うように、昨年対比で100%達成のような状況になっているのが一般的です。もちろん、事故削減目標を経営方針に立てて行動するといったことを実施し、実際に事故を低減させているリスクマネジメント委員会は以外と少ないです。

リスクマネジメントについては、たくさん書くことがあります。
データ収集、原因分析、対策立案、実施、評価、教育、といったリスクマネジメントのあり方が議論されなければなりません。また、予防の合理的な方法の開発が必要です。我々は、医療過誤訴訟に学びながら、実際に院内に事故を抑止できる仕組みをつくり、対応することを主張しています。つまり、従来のやり方では限界があること、実質的なリスクマネジメントが多面的なアプローチによって必要であることについて書いていきます。(続く)

投稿者 石井友二 : 07:31 | トラックバック

2005年04月10日

病院組織に必要なマネジメント 医療ツール(4)-石井友二

地域連携におけるディスチャージ、退院支援計画の話がでてきましたが、看護の根本的な問題として捉える必要があります。後連携、平均在院日数短縮のためのディスチャージという側面が重視されがちですが、本当は違うのではないかというのが私の考えです。

本来の平均在院日数のなかでどう治療するのかについては、パスが基準にはなりますが、実際には、前提としてよりよい医療と看護が前提になります。

入院診療計画書の入院期間に不定、不明、あるいは3~4週間といった書き方をしている医師や看護診断を確立していない看護を行っている看護師にはいきなりディスチャージといっても、期日までに退院してもらう仕組みには、なかなかなじめないものがあるようです。医師は予定入院でない場合には、検査をしながら判断するからといったことはあるにしても、また看護師はアナムネから始まった診断、計画を仔細にしている時間はないということであるにしても、体制として退院支援計画の前提となる医療看護のかたちを議論していくことが必要です。

ややもすると、現場においては、高齢化や看護記録の方法についての議論に終始することが多いなかで、院内における医療(診療体制)や、看護の仕組み、あり方(あるべき看護プロセス)についての検討をおこない問題を絞り込んでいくことが相当です。

少し言い過ぎました。実際には、外部から我々が生意気なことをいう立場にはなく、現場の戦国状態を垣間見るにつけ、つくづく医療や看護は大変な仕事であり、何かを徹底してやり続けることがいかに難しいことであるのかについて認識しています。しかし、せっかくの懸命な慈悲心に基づく行動を科学的なツールを利用して、よりよく成果を高めるものとしていただきたい、それが我々の思いであり、役割であると思いたい、というのも本心です。(続く)

投稿者 石井友二 : 08:58 | トラックバック

2005年04月08日

病院組織に必要なマネジメント 医療ツール(3)-石井友二

地域連携活動を的確に行うための仕組みづくりも重要な医療ツールです。
連携先のマーケティング、営業活動、体制、販促ツールづくり、HPづくり、院内外の体制づくり、ディスチャージといった地域連携のさまざまなツールが用意できているのかどうかがポイントとなります。

私は会計士になる前はリクルートでいっときリクルートブックスや週間就職情報、とらばーゆの飛び込み営業をしていましたが、病院の地域連携担当者はリクルート営業ばりの営業ができるように当社によって指導を受けることになります。

最初は皆いやがっていますが、あとで営業って楽しいですね、という担当者が続出します。
ドクターと親密に話しができる、患者さまのことを本当に思っているドクターと地域医療の仕組みづくりをすることは意味のある、医療従事者として誇りに思える仕事のひとつです。とりわけ前連携を進展させることは患者さんの治療に関する知識をもった看護師やコメディカル、医事課のスタッフの得意な部分になりえます。

従来のやり方で地域連携をしている病院とマーケティング手法や科学的管理に基づく営業活動を確実に行いながら、患者さまに迫る病院とでは、自ずと結果が違ってきます。地域連携活動は一般論ではなく、個別の戦略論での文脈で議論すべきであり、病院戦略と不可分であることが認識されなければなりません。地域連携はまさしく重要な医療ツールです。
(続く)

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2005年04月06日

病院組織に必要なマネジメント 医療ツール(2)-石井友二

整理すると、教育のところで説明した課業分析によって作成されるマニュアル。マニュアルがすべての業務をあきらかにするツールとして最も重要なものとなります。ここからスタートして職務分掌規程や権限規程により、院内業務を網羅的に整理します。

この段階では、前述したISOは、品質保証のための業務フローとその説明マニュアル、定型的な書類を必要とすることから、使い方によっては、やはり品質保証のための仕事全体を明らかにする道具となります。PDCAを廻しながら常に一定の品質が維持できる状況の枠組みを提供します。但し、もともと製造業からスタートしたISOは、医療用には細部にわたっての問題解決を行いえません。もともと枠組みであることを理解しておくことは必要です。

何れにしても仕事のながれや手技等についてのフローができたことで、医療の標準化の一部は確保されました。治療の観点から標準化を行うものがクリティカルパスです。パスをどれだけ作成し適用していくのかについて、さすがに現状では医師も自らの裁量を奪うであるとか、イニシアティブを制限されるから作成に反対であるという考えを持つ方は少なくなっているとは思いますが、逆に、高齢化や合併症によって適用されないケースが増加していることも間違いありません。

クリティカルパスを作成するときには、重要度、頻度、疾病別平均在院日数が指標になりますが、高齢化や合併症には抗えない(あらがえない)ということでしょう。ただ、高齢者用であるとか、合併症があるときにはいったんバリアンスとしてパスをはずすものの、一応の処置が済んだのち、もとのパスに戻るといったことでの継続適応を行うことも検討されています。あまりにも平均在院日数が短縮され5日をきった米国で本当にパスが機能しているのかどうかについての疑問はありますが、日本においてはまだまだパス適用によるチーム医療を志向するながれは変わらないでしょう。

当社は、できるだけ簡単かつ実質的に機能するパス作成支援ソフトを開発していますが、迅速かつ的確に医療の標準化、チーム医療を行うためのパスも重要なツールの一つです。
蛇足であるかもしれませんが、パスを利用する職員のための当該パスのアセスメントツールやアルゴリズム(関連図)がないケースが大半であり、実際現場で実質的なチーム医療が成立しているのかとても心配です。勿論、個々の項目や行為はマニュアルによって担保されている必要があります。こうしたなかで実質的なアウトカムマネジメントや、バリアンスマネジメントについて成果をあげていくのはとても大変なことであると考えます。
ある病院で、最近バリアンスノートってなんですかと看護師さんに聞かれたことがありますが、「変動」を含めたバリアンスを管理し、そこから問題発見解決している病院は意外と少ないのかもしれません。

パスは検査パスから作成に入り、入院パスに進むケースが大半ですが、地域連携パスが重要なパスであることについては意外と理解されながら進んでいない部分であると考えます。
いわゆる疾病管理において、生活習慣病について地域完結型医療を行う病院は、地域連携パスが作成されていなければならないことはいうまでもありません。専門医とかかりつけ医の連携をどのようにとるのかといった部分において、例えばDMのパスは必要不可欠です。(続く)

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2005年04月04日

病院組織に必要なマネジメント 医療ツール(1)-石井友二

仕事に対する組織的動機が喚起され、行動誘導された職員が、成果を着実にあげていくためには、成果を上げる道具が必要です。道具を自らつくり活動することも可能ですが、成果獲得までの時間を短縮するためには、標準化された道具を利用していくことが必要です。既述した目標管理制度や、評価制度、教育制度は、個人の個人的動機での仕事+組織的動機による仕事への誘導に貢献するものでしたが、実は教育の3つの形態をより充実させ機能させるためには、コンテンツが必要となります。課業分析により作成したマニュアルを多くの役立ちのなかで捉えることができます。

 マニュアルは組織のナレッジです。ナレッジをベースとしてマニュアルを評価すると、
クリティカルパスの各項目の実施ツールであり、また権限規程作成の基礎となります。さらにリスクマネジメントにおいてアクシデントやインシデントが発生したときの防止策を掲載するツールである等多くの役立ちがあります。
 これらの資料を作成するための委員会活動が必要です。委員会が組成されなければなりません。
  
 また平均在院日数の短縮という目標設定においては、事故防止、感染症防止、退院支援計画の確立、看護過程の見直しといった活動が必要ですし、紹介率の向上という目標設定には、地域連携室の組成、院内外地域連携体制の整備、地域連携室活動の体系化等々、の仕組みづくりが必要となります。紹介率向上のためには、さらに消防署からの救急救命士訓練の実施、セミナー実施のためのツールづくり、プロモーションのためのツールづくり…等々、あらゆる道具(医療ツール)作りが必要となります。

 病院機能評価取得やISOの取得といった部分も、全体像を考えるためには必要なことであるとも考えますが、実はそれらは院内改革のきっかけであり、さらに体系的なアプローチによる医療ツールの作成が必要となるところです。(続く)

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2005年04月03日

病院組織に必要なマネジメント 人事管理(2)-石井友二

ここで教育が問題となります。従来の教育は、職場内教育と集合教育、自己啓発で実行されてきていました。しかし、これらは観念的であり、職場内教育の体系が明確に確立されていたとはいえません。

集合教育は、外部の集合教育か、あるいは看護部において教育委員会があるように、各部門が独自で教育計画を立案し、そこで各部門が縦割りのなかで集合教育=部内勉強会を開催するか、あるいはリスクマネジメント委員会やトピカルなテーマにおいて、特別な勉強会が開催されるということで集合教育が語られるということが一般的であったようです。

自己啓発は病院としての支援がほとんどなく、外部の集合教育に出席することが個人の申請であった場合、それが自己啓発であるといった理解ができる程度であり、体系的に自己啓発に対する支援を行うなどの制度としての取り組みができていたわけではありません。

 教育においても病院としての標準が必要です。職場内教育は上司の経験や知識によって、部下が無秩序に教育されることを職場内での教育=職場内教育と定義しており、組織として職場内教育が体系的に形づくられているわけではありません。

 職場内教育は病院の標準によって科学的に実施される必要があります。すなわち、誰が上司であろうと一定の必要な教育が各部門で実施されなければ計画された職場内教育であるという説明はできない、ということであり、看護部で行われているラダーによる教育が行われるなどの体系が必要となります。

課業分析を行うなかで、職場の業務項目を整理し、いわゆるマニュアルとしたうえで、それらの内容や習得必要な等級や時期を一定のルールによって明らかにすることによって、職場内教育の体系をつくりあげることが適当です。個人毎の教育カルテをつくり、ある時点で個人技術技能の一斉点検を行い、課題を発見したうえで目標管理における目標(横目標=年度の戦略がどう変化しようともその職種についている限り必要となる技術技能目標)として日常活動を行うことになります。

そうでなければ、上長の知識や経験のレベルによって部下が教育されれば、上長の知識と経験+部下の意欲や能力によって部下のレベルが決定されることになります。病院が関知しない与件が多く、職員の質的レベルを管理できません。

少なくとも、組織として職員の質的レベルを一定の方向に誘導するためには、教育しなければならない項目とその内容、教育方法、評価方法についての標準化が行われ、教育の結果の評価方法が明確になっているなかで、職場内教育を行うことが適当です。

職場内教育で理解できないことがあったときに集合教育を実施します。集合教育は各部門が年間の教育プログラムを提出したなかで、それら全体を開示し、どの講座にでてもよい、いやもっと積極的に、こうしたことが理解できていないので、こうした講座にでるようにといった指導が職場で行われ、集合教育に参加することが相当です。次の段階では、病院として必要なカリキュラムを組み、優先順位に応じて当該カリキュラムを職員に提示したうえで、職場内教育の補完を行うことが必要となります。

なお、職場内教育によって個人目標を達成した者や、集合教育に参加した者は評価されるという仕組みが必要です。人は自分のために生き、自分で目標を設定し、目標を達成し、達成したことに自らの達成感や満足感を得る者もいるでしょう。しかし、多くは組織のなかで、認めて欲しいという欲求ももっています。自らの納得と組織からの納得が必要です。

自己啓発は、病院では現状、個人に任せることが適当です。

企業であれば自己啓発に組織として支援を行うところもあります。しかし、病院の職員はプロフェッショナルであり、自己啓発は職業を選択した時点で、一生付随する人生の課題であると考えます。

自らがプロでありつづけるのは、他者からプロとして認めてもらえるということであり、であるとすると客観的な評価対象となるプロとしてのスキル(技術技能)をもっていなければならないことになります。

プロとしてのスキルがどのようなものであるのかは、第三者が決定することであり、主観的な判断で決定されるものではありません。成果をあげ、評価され続けるまでスキルを上げ続ける必要があります。また維持進化し続ける必要があります。自己啓発は原則として、個人の責任で継続されるべきものです。
職場内教育での課題発見、課題解決のための集合教育、より知識の精度をあげるための自己啓発といったプロセスが採用されます。(続く)

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2005年04月02日

病院組織に必要なマネジメント 人事管理(1)-石井友二

病院に必要なマネジメントは、どのようなものであるのか説明しましょう。
職員が働きやすい職場環境は、職員に阿る(おもねる)ものでも媚びるものでもありません。職員がプロの医療従事者として、誇りをもって自らを成長させ、結果として自らの使命を果たすことができる環境です。

環境は、職場の文化や風土であり、制度や具体的な仕事の仕組みをいいます。それらをどのようにつくりあげればよいのでしょう。組織が力をもつのは、組織に所属する人が力をもつときです。人が組織において力をもつためには、人が所属する組織での仕事に対して成果をあげようとすることが必要です。

組織での仕事を自分の仕事として捉え、成果をあげようとすることです。組織と自分が一体となって仕事に立ち向かう。仕事が自分のためでもあるとともに、組織のためであることが同時に考えられる。同じように考えられるようにすることが必要です。そして行動がその思いに誘導され、継続して行動動機とならなければなりません。

ここでは、マーケティングにより組織の現状や状況を的確に把握したうえで外的内的戦略を明確にし、経営方針の提示、部門目標への落とし込み、個人目標設定を行うこと、公平公正な評価を行うための評価制度を導入すること、教育体系を整備すること、とりわけ目標達成をベースとした中間管理職の育成を行うこと、などが必要なマネジメントとなります(人事領域)。

もとから使命感をもった職員が多い病院において、こうした組織の動きは、より一層医療及び医療周辺活動に対する動機を提供することになります。自分のやりたいこと、
組織が目指していることの方向が合致することが組織への帰属意識を強くする要因です。職員が組織目標に対する同意を行い、組織的な制度や仕組みの整備もとで、目標達成に向けて行動する力の総和が組織の文化や風土を生み出します。職員は組織という場を借りて自らの目標を達成し成長できる、結果として患者さんは満足し、組織は維持拡大できるといった文脈での結論を得ることができます。

目標管理制度については、賛否両論さまざまな議論があります。一般の企業においては、もともとサラリーマンといわれるくくりで総括される社員が目標管理の対象であり、目標が多様であり、価値が多様であるなかでの目標管理であるからです。

しかし、病院はプロフェッショナルの集合体であり、もともと目標管理がなじむ組織であることは間違いありません。生涯を通じて当該資格での仕事をしていくかぎり、何をしていかなければならないかがスペシャリストとして明確になっているからです。

 目標管理には、目標の設定において、難易度の評価をどのようにするのか、またプロセスをどのように評価するのか、さらには、達成度をどのように評価するのかといった部分に大きく議論があります。
 そもそも、こうした議論をするためには、評価や処遇についての議論をしておかなければなりません。目標達成=業績評価として賞与の評価とすること、さらに賞与×2回
+意欲考課+能力考課(情意考課)+勤怠+αといった人事考課をすることなど、さらには、賃金体系を能力主義とすること、等々付随して、さまざまな検討が必要です。

 何れにしても、患者さんのために身を粉にして働こうという看護師、コメディカル、そして他の職員に対し、仕事を進めていくときの組織としての方向を明確にしていくことが職員にとって判りやすく、成果をあげた職員に対し、病院の評価の仕組みのなかで適正に評価、処遇できるのかということが問われることになります。

 なお、評価はあくまでも教育の課題を発見するものであることを忘れてはなりません。

評価(業績評価、人事考課)をすることで個人の業績達成プロセス、仕事に対する意欲、発揮された能力に対し、組織及び個人の課題を発見すること。その課題を解決できるよう教育育成していくことで成果をあげてもらうことが組織目標とならなければなりません。評価体系が明確であっても、組織目標達成に貢献できない評価体系であれば意味がない、ということでしょう(続く)。

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2005年04月01日

病院という組織について(2)-石井友二

病院で働いている職員には、働く動機に一般の企業の社員と少し異なる点があると思います。それは慈悲心です。これはそうみてしまうからかもしれませんが、人の命に関わる仕事をするなかで、慈悲心のない人に病院の仕事はなじまないと日ごろ思っています。そもそも、この患者さんをなんとかしてあげたいといった思いが医師をはじめとした職員の方の思いであり、その結果としての医療看護活動、医療周辺活動であるからです。我々は『使命感に裏付けられた慈悲心とプライドによる医療』というようにいっていますが、そうした医療をしたいという思いが医療従事者にはあると、私は信じています。

そのことは組織のマネジメントがなくとも、病院職員が病院の機能を最大化していこうとする原動力になっています。歯を食いしばって患者さんのために頑張る個々の職員の懸命な努力によって病院が機能を果たすという図式になっているのです。

しかし、個々人の努力に依存し組織としてマネジメントに力を入れない病院は、職員やそして少なくなってきた患者さんからの離反を招き、組織を維持できないことになります。
世論や制度が情報開示のもとでの医療事故や医療の質、病院全体の質に対し、厳しく選別の条件を突きつけてきているからです。一方で個人情報開示やプライバシー保護においては情報の取り扱いについての制約があり、病院はあらゆる点からの改革を促されています。

まさに組織のマネジメントを正しく、あるべきかたちで実施することが、存在自体を左右する状況になってきたということができます。

 医療の質と、結果としての効率向上を行うためには、個人の懸命な努力や貢献だけに依存するのではなく、病院は、組織として医師をはじめとした職員の仕事を支援する制度や仕組みや道具をつくりあげ、職員に提供していくことが必要です。

それは、かたちだけのものではなく、病院が地域完結型医療に貢献するためには、どのような活動をしていけばよいのか、どのような機能をもてばよいのか、どのようなサービスを提供していけばよいのかについて十分に議論された、実質的に成果のあがるものでなければなりません。

病院組織はいまこそ、自らの使命感によって懸命に働く職員が、安心して地域医療に貢献できるよう、自らの組織に最も適したマネジメントを行っていく必要があるのです。(続く)

投稿者 石井友二 : 00:00 | トラックバック